第3回「日本の若手エンジニア」
みなさん、日本で毎年博士がどのくらい誕生するか知っていますか?
博士論文は約15,000件/年ほど提出されます。そのうち、医師が半分、理工系といわれる分野が3割強、その他が2割弱です。一応、理工系の割合は少しずつ増えているようなのですが、だからといって残念なことに日本の理工系知識はレベルが上がっていっていると考えるのは時期尚早かもしれません。
今回は私の知り合いのエンジニアであるT博士との茶飲み話から「日本の若者」について考察してみたいと思います。
まあ、若者と言っても私には若手エンジニアのことくらいしか話すことはできないのでご容赦を。(まりりん君ならばイマドキの若者のことも存分に語れるのだがねぇ)
まずは、このT博士について少しお話しますと・・・
わたし同様、いい年して未だに目をキラキラさせた根っからの理工系少年ですなぁ。
ところで、この読者の中で、シリコンウェーハを見たことのある人はどの程度いますか?シリコンウェーハとは、LSIの材料になる円盤です。この円盤の上に、様々な工程を経て、たくさんのLSIを焼き付けます。と、いうことは円盤は大きい方が一度にたくさん焼き付けられることになります。
パソコンに使うメモリーは、ついこの間までは1個16MBとか64MBとかでしたが、今は1GBが当たり前になっていますよね。でも、価格が16MBのときに比べて60倍になっているわけではないのは秘訣があります。
その秘訣とは・・・LSIのサイズを小さくすることと、円盤のサイズを大きくすることでした。そうすることで1回当たりに焼き付けるLSIの数を増やし、コストを安くしてきたわけです。この、円盤を大きくすることを担ってきたのが、T博士その人なんです。結構すごい有名人なんですよ
まあ、わたし以上ってことはないですがね。
(このコーナーはまりりん君がいないから舌好調だねぇ、わたし)
先日、T博士が某メーカへ若手教育に行った際の話ですが、試しにちょっとした問題を若手に投げかけてみたそうです。一人を除いて、まったくできなかったらしいです。でも、その一人はTさんの意図するところを完璧に理解して、模範解答を出したそうです。T博士は思わずうれしくなって、「君はすごいねぇ!名前は何ていうの?」と聞いたところその若手エンジニアは
「かです」と答えました。T博士は聞き取れなかったらしく、もう一度たずねました。
やはり「かです」と答える。そうです、彼は「何」さんという中国出身のエンジニアでした。
できたのは、彼だけ・・・。
同じような話として、T博士が韓国に招かれた際に、韓国人の若手エンジニアと話す機会があったそうです。彼はロシアで勉強したと言うのでT博士が英語で「ロシア語で勉強したの?」と聞くと「そうだ」と日本語で答える。「じゃあ、出かける前の勉強は大変だったんじゃないの?」と聞くと、「いーえ、行ってから勉強しました」とのこと・・・・。
ロシア語がまったく分からないのにロシアへ行ってしまうそのバイタリティ。しかも、その場でロシア語を覚えてしまう。さらに日本語まで話せる!
実は、T博士のような話を聞いたのはこれが初めてではありません、他でも聞きました。・・・日本は大丈夫かしら。
これは単なる日本人と外国人との比較ということではないのです。
彼にとってエンジニアは憧れの職業。だからエンジニアになるために、どんな苦労も苦ではないのです。先にバラ色の未来があるから膨大な勉強時間も乗り越えられるのです。
本来人間には「知らないことを知りたい」という根源的な欲求が備わっています。この欲求を満たすための努力を行った人は結果的に社会的にも高い評価を得ることができる。そういう社会が本来的であるはずです。
しかし日本はどうでしょうか?
昔の若者と今の若者で、能力に違いがあるとは思えません。違うのは環境です。
若手のエンジニアに元気が無いようにみえるとすれば、バラ色の未来が描けないからです。若者を取り巻く膨大な情報の中で泳ぎ疲れてしまっているだけなのではないかと感じています。
そして、これを作ってあげられなかったこれまでの理工系先輩たちのせいでもあります。
まず現実的なアプローチとして、小さくても成果を挙げているエンジニアを評価してあげる雰囲気作りだと考えています。理工系で頑張っている人を「ダサい」みたいに言わせないようにしたい。かつて技術立国と言われていた日本。あの頃は学歴など関係なく、「これはどうなっているんだろう?」、「自分でも作ってみたい」という素直な知識欲から何事もスタートしていったのです。そこから何度も失敗してそのたびに学び、工夫していくなかで技術は育てられ磨かれていきました。そういう技術を持っているエンジニアは断然カッコいいのです。それこそが本当の強さになるんです。
現在の日本を理工系にとっての理想的な社会にするのは容易でないことはわかりますが、「できる人」、「やる人」を正当に評価し、素直にそれを目指していく若者が増えるような日本にならないものかと、今更ながらに思いました。
理工系、がんばれ!
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