商品コード: RLB223046

リグニン利活用のための最新技術動向

販売価格(税込): 72,600
ポイント: 660 Pt
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出版図書

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■体裁:B5判・227頁
■発刊:2020年3月2日
■ISBNコード:978-4-7813-1494-5
■シーエムシー出版

【監修】
梅澤俊明

【刊行にあたって】
持続型社会の構築に向けて、化石資源に対する依存度はますます低下し、再生可能資源・エネルギー利用の重要性が高まっている。特に、非可食性であり且つ蓄積量の多い木質(リグノセルロース)バイオマスからの工業原材料や液体燃料生産に関する必要性と関心が近年世界的に頓に高まっている。木質多糖の利用については、セルロースナノファイバーなど高次構造を生かした利用技術開発や糖化発酵技術開発が進捗しているが、リグニンの大規模な経済的利用は、パルプ廃液リグニンの燃料・分散剤・粘結剤としての利用などに限られている。このリグニン利用の難しさは、主にリグニンの構造の複雑さ、単離の難しさ、及び誘導体化起点となる官能基が限定されていることに起因する。さらにこのリグニン利用の状況は、基本的に半世紀以上にわたり殆ど変わっていないのが実態である。
リグニン利用に関する高い注目は、過去数次にわたり大きな潮流となっていたが、バイオエコノミー時代を迎え、バイオマス由来の芳香族成分供給への希求度の上昇や、バイオマス利用システムの経済性向上に向け、再びリグニンの高付加価値利用研究開発が強く望まれている。
一方、リグニンを専ら扱う専門書或いは技術解説書は、内外を問わずそれほど多くない。和書では、古く「リグニンの化学」(八浜義和、上代昌、日本評論社、1946)、「リグニンの化学」(中野準三編、ユニ出版、1979)が挙げられる。海外の書籍としては、「The Chemistry of Lignin」(F.E. Brauns, Academic, 1952)、「Lignins」(K.V. Sarkanen, C.H. Ludwig, eds., Wiley, 1971)、「Methods in Lignin Chemistry」(S.Y. Lin, C.W. Dence, eds., Springer, 1992)が挙げられ、1970年代以降の書籍には、現在の研究に対してもなお基盤となる重要情報が記載されている。さらに、2013年にはシーエムシー出版より「リグニン利用の最新動向」(坂志朗監修)が出版された。同書はリグニンを主題としてリグニン利用の最新動向について初めて網羅的に解説された良書であり、当面類書出版の必要が無いとさえ思われた。しかし、昨今のリグニン化学の進展は著しく、且つリグニン利用に対する注目の高まりを受けて、本書は企画されたものである。本書が今後のリグニン化学とリグニンの利活用技術の進展に何らかの貢献ができれば望外の幸いである。

京都大学
梅澤俊明

【著者】
梅澤俊明  京都大学
福島和彦  名古屋大学
高部圭司  京都大学
飛松裕基  京都大学
山村正臣  京都大学
梶田真也  東京農工大学
岸本崇生  富山県立大学
河本晴雄  京都大学
南英治  京都大学
宮藤久士  京都府立大学
横山朝哉  東京大学
髙野俊幸  京都大学
淺田元子  徳島大学
中村嘉利  徳島大学
敷中一洋  (国研)産業技術総合研究所
大塚祐一郎 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
宮西孝則  紙パルプ技術協会
山田竜彦  (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
渡辺隆司  京都大学
浦木康光  北海道大学
中村雅哉  (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
上村直史  長岡技術科学大学
政井英司  長岡技術科学大学
片山義博  東京農工大学 名誉教授
大山俊幸  横浜国立大学
木村肇  (地独)大阪産業技術研究所
香川博之  (株)日立製作所
武田新太郎 (株)日立製作所
松下泰幸  名古屋大学
相見光  日本製紙(株)
平井信充  鈴鹿工業高等専門学校
大田ゆかり 群馬大学
西村裕志  京都大学
片平正人  京都大学
磯﨑勝弘  京都大学
中村正治  京都大学
園木和典  弘前大学
野中寛  三重大学

【目次】
第1章 リグニンの一気通貫的生産利用
1 持続可能社会構築に向けた最近の社会情勢
2 再生可能バイオマス資源
3 再生可能バイオマス資源の一気通貫的生産利用
4 おわりに

第2章 リグニン分布と構造解析
1 リグニンの分布と化学構造
1.1 植物の進化とリグニン
1.1.1 植物の進化におけるリグニン構造の変遷
1.1.2 リグニンの機能
1.2 樹木中におけるリグニンの分布
1.2.1 樹幹内分布
1.2.2 湾曲部におけるリグニンの分布
1.2.3 放射柔細胞のリグニン
1.2.4 樹皮のリグニン
1.2.5 根端におけるリグニン(カスパリー線)
1.2.6 リグニン分布の可視化

2 細胞壁中でのリグニン分布
2.1 はじめに
2.2 針葉樹仮道管のリグニン分布
2.3 広葉樹木部組織でのリグニン分布

3 リグニンの化学構造
3.1 はじめに
3.2 脱水素重合によるリグニンの形成
3.2.1 リグニンモノマー
3.2.2 脱水素重合反応機構
3.3 リグニンの構造解析アプローチ
3.3.1 化学分析法
3.3.2 多次元NMR法
3.4 天然リグニンの化学構造的特徴
3.4.1 シダ・裸子・双子葉植物の維管束リグニン
3.4.2 単子葉類イネ科植物の維管束リグニン
3.4.3 特定の植物種・組織特異的に生じる天然リグニン
3.5 おわりに

4 リグニンの迅速評価システム
4.1 はじめに
4.2 リグニン迅速定量法
4.3 リグニン迅速構造解析法

5 遺伝子組換え技術を用いたリグニン分子の側鎖構造の改変
5.1 はじめに
5.2 植物に内在する遺伝子の発現抑制に伴う側鎖構造の変化
5.2.1 CAD遺伝子の発現低下に伴う分子構造の変化
5.2.2 CCR遺伝子の発現低下に伴う分子構造の変化
5.3 異種遺伝子の過剰発現によるリグニン側鎖構造の改変
5.3.1 アシル化モノリグノールの過剰生産による側鎖構造の改変
5.3.2 クルクミンの取り込みによる側鎖構造の改変
5.3.3 バクテリア由来の酵素遺伝子の発現による側鎖構造の改変
5.4 おわりに

6 リグニンの代謝制御による木質バイオマスの改良
6.1 はじめに
6.2 リグニンの構造上の特徴
6.3 リグニンの利用
6.4 リグニンの代謝工学
6.5 おわりに

7 リグニンモデル化合物および人工リグニンポリマーの合成
7.1 はじめに
7.2 モノリグノールの合成とモノリグノールの脱水素重合によるリグニンモデル化合物の合成
7.2.1 モノリグノールの合成
7.2.2 モノリグノールの脱水素重合によるモデル化合物の合成
7.3 β-O-4型二量体モデル化合物の合成
7.3.1 β-O-4型二量体モデル化合物
7.4 β-O-4型ポリマーリグニンモデル化合物の合成

第3章 リグニンの分解・抽出
1 熱分解によるリグニンからの化学物質生産
1.1 はじめに
1.2 熱分解温度と生成物の化学構造
1.3 ケミカルス生産の視点からの各温度域におけるリグニン熱分解分子機構
1.3.1 低温(400℃以下)
1.3.2 中温(400〜500℃)
1.3.3 高温(600℃以上)
1.4 おわりに

2 超・亜臨界流体技術によるリグニンの分解
2.1 超・亜臨界流体技術
2.2 超・亜臨界水
2.3 超臨界アルコール
2.4 おわりに

3 イオン液体を用いたリグニン分解
3.1 はじめに
3.2 イオン液体とは
3.3 1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリドを用いた分解
3.4 テトラブチルアンモニウムヒドロキシドを用いた分解
3.5 おわりに

4 酸性および塩基性条件下におけるリグニン分解
4.1 酸性条件下におけるリグニンの反応
4.1.1 はじめに
4.1.2 ベンジルカチオン構造の生成
4.1.3 β-O-4結合部位における反応
4.2 塩基性条件下におけるリグニンの反応
4.2.1 はじめに
4.2.2 フェノール性部位における反応
4.2.3 非フェノール性部位における反応
4.3 おわりに

5 リグニンの電解酸化
5.1 はじめに
5.2 リグニンのEMS反応とは?
5.3 リグニンのEMS反応の工業的な応用の可能性
5.3.1 クラフトパルプ化前処理反応への適用
5.3.2 バニリン類の生産法への適用
5.3.3 リグノセルロースナノファイバー調製法への応用
5.4 LMS用メディエーターを用いたEMS反応の検討
5.4.1 単量体リグニンモデル化合物による検討
5.4.2 二量体リグニンモデル化合物による検討
5.4.3 二量体リグニンモデル化合物による検討(TEMPOに関する検討)
5.4.4 人工リグニン(DHP)による検討(NHPIに関する検討)
5.5 おわりに

6 高活性水蒸気を用いたリグニンの分解と利用
6.1 はじめに
6.2 リグニンの分解・低分子化
6.3 低分子量リグニンの抽出分離と物性評価
6.4 エポキシ化リグニンの合成
6.5 エポキシ化リグニン硬化物の合成
6.6 おわりに

7 環境にやさしいプロセス【同時酵素糖化粉砕】による機能性リグニンナノ粒子の抽出
7.1 緒言
7.2 植物同時酵素糖化粉砕―環境にやさしいリグニン抽出法
7.2.1 同時酵素糖化粉砕【SESC】
7.2.2 SESCで抽出したリグニン誘導体【SESCリグニン】の性質
7.3 SESCリグニンの機能
7.3.1 高分子耐熱化
7.3.2 紫外線吸収能・難燃性
7.4 総括

8 パルプ化反応の現状
8.1 クラフト蒸解
8.1.1 リグニンの基本構成単位
8.1.2 設備
8.1.3 脱リグニン反応
8.1.4 修正蒸解法のコンピューターシミュレーション
8.2 オゾン漂白
8.2.1 オゾンとリグニンとの反応
8.2.2 設備

第4章 リグニンの応用展開
1 マテリアル利用のための改質リグニンの開発
1.1 はじめに
1.2 リグニンのマテリアル利用の意義
1.2.1 リグニンの起源と本質
1.2.2 リグニン材料利用のボトルネック
1.2.3 針葉樹造林木の優位性
1.3 改質リグニンの開発
1.3.1 ポリエチレングリコール(PEG)による改質
1.3.2 改質リグニンの製造プロセス
1.4 改質リグニンの製品展開
1.4.1 繊維強化材用マトリックス樹脂
1.4.2 電子デバイス
1.4.3 3Dプリンター用基材
1.5 改質リグニンのビジネス展開
1.6 おわりに

2 電磁波触媒反応を介した植物からのリグニン系機能性高分子の創成
2.1 はじめに
2.2 リグニンのエポキシ樹脂原料への変換
2.3 リグニンから機能性高分子原料バニリンの生産
2.4 リニア型リグニンの創成と機能開発

3 リグニンの単離・改質とリグニンを活用した機能性材料の開発
3.1 水系及び有機溶媒系化学パルプ化と得られるリグニンの特徴
3.2 リグニン利用の研究動向
3.3 リグニンを原料とする電気二重層キャパシタ(Electric Double Layer Capacitor:EDLC)
3.4 樹脂原料としてのリグニン

4 リグニンから新規プラットホームケミカルの変換技術開発と高分子材料開発
4.1 はじめに
4.2 リグニンの化学構造とこれまでの利用技術
4.3 新しいリグニン利用技術
4.4 リグニンから生産される中間体PDCと機能性材料開発の可能性
4.5 PDC含有機能性バイオベース高分子の開発
4.6 PDC含有分子の強力接着剤への展開
4.7 PDC低分子誘導体の有機ゲル化剤としての展開
4.8 今後の展望

5 多官能フェノール導入リグニンを利用したエポキシ樹脂硬化物の高耐熱化
5.1 はじめに
5.2 リグニンへの多官能フェノールの導入
5.3 多官能フェノール導入リグニンを硬化剤として用いたエポキシ樹脂硬化物
5.4 おわりに

6 草本系リグニンによるフェノール樹脂の高性能化
6.1 はじめに
6.2 リグニンとは
6.3 リグニンの利用
6.4 草本系リグニンとフェノール樹脂との複合化
6.5 草本系リグニンを含むフェノール樹脂の特性
6.6 変性リグニン
6.7 変性リグニンとフェノール樹脂との複合化
6.8 変性リグニンを含むフェノール樹脂の特性
6.9 おわりに

7 リグニンの電気絶縁樹脂への応用
7.1 緒言
7.2 水蒸気爆砕リグニンの性状
7.3 リグニン硬化エポキシ樹脂の電気絶縁樹脂への応用
7.3.1 リグニン硬化エポキシ樹脂の性状
7.3.2 リグニン硬化エポキシ樹脂のプリント回路基板への応用
7.3.3 リグニン硬化エポキシ樹脂のモールド樹脂としての応用
7.4 リグニン-エポキシ樹脂添加によるフェノキシ樹脂の高耐熱化
7.4.1 フェノキシ樹脂中におけるリグニン-エポキシ樹脂の反応挙動
7.4.2 リグニン-エポキシ樹脂添加フェノキシ樹脂の後架橋による耐熱性向上
7.5 おわりに

8 リグニン由来の難燃性樹脂
8.1 はじめに
8.2 リグニン由来の難燃剤
8.3 リグニン由来の難燃樹脂
8.4 難燃樹脂の熱分解特性
8.5 難燃樹脂の難燃性
8.6 最後に

9 リグニンスルホン酸塩の利用技術
9.1 緒言
9.2 リグニンスルホン酸塩の基本的な性質
9.3 リグニンスルホン酸塩の利用技術
9.4 リグニンスルホン酸塩の利用用途
9.5 さいごに

10 変性リグニンの鉛電池負極添加剤としての応用
10.1 鉛電池の概要
10.2 鉛電池負極添加剤〜スルホン化リグニン〜
10.3 実電池の充放電性能に及ぼすスルホン化リグニンの添加効果
10.4 鉛電池添加剤として最適なリグニンの検討
10.5 最後に

11 海洋微生物酵素群によるリグニン分解高度化と人工漆材料への展開
11.1 海洋由来細菌Novosphingobium sp. MBES04株のβ-etheraseシステムの特徴
11.2 磨砕リグニンからのフェニルプロパンモノマーのワンポット酵素生産
11.3 NMR法によるSDRsとGSTs反応のリアルタイム追跡
11.4 リグニン由来芳香族モノマーを用いた人工漆材料の開発

12 不均一なリグニン由来フェノール類からcis,cis-ムコン酸を生産する微生物株の分子育種
12.1 はじめに
12.2 リグニンを原料としたccMAのバイオ生産
12.3 リグニンを炭素源としたccMAのバイオ生産
12.3.1 針葉樹リグニンを炭素源としたccMAのバイオ生産
12.3.2 広葉樹リグニンを炭素源としたccMAのバイオ生産
12.3.3 Pseudomonas sp. NGC7株を宿主としたccMAのバイオ生産
12.4 おわりに

13 t-ブタノールを加えた木材の濃硫酸処理による有用リグニンの分離
13.1 はじめに
13.2 濃硫酸法木材糖化プロセスにおけるリグニン有効利用
13.2.1 濃硫酸処理過程におけるリグニンの反応
13.2.2 硫酸リグニンを有用化する研究事例
13.2.3 モノフェノール類を用いたリグニンの自己縮合抑制
13.2.4 t-ブタノールを用いるリグニン自己縮合抑制の可能性
13.3 t-ブタノールを加えた木材の濃硫酸処理
13.3.1 t-ブタノール添加量の設定
13.3.2 得られるリグニンは高収率で淡色かつ高い有用性
13.3.3 t-ブタノールを加えて得られたリグニンの化学構造
13.3.4 自己縮合の抑制により期待される利用用途
13.4 まとめと今後の展望
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